第4回「鶏の品評会」
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「品評会開会」
 品評会開催の朝。会場には、床全体にむしろが敷き詰められる。そこに鶏を入れるカゴが整然と並ぶ。カゴは、50cm×50cm程度で折り畳み式。組みたてた際、上部が開くようになっている。

 愛鶏家は愛鶏を専用の木箱に入れて自宅の鶏舎から搬送し、会場についたら受付を済ませた後に、鶏の健康状態の採集確認を行ってから並べられたカゴに鶏を入れる。ひとつのカゴに入れる鶏は常につがいの2羽。

 鳥類のほとんどは雄鳥の方が美しく体躯も立派である。鶏もその例に漏れず、雄は雌よりも美しい羽色を持っている。そのため、観賞する側は、雄ばかりに気を取られるが、審査は雄と雌、両方で行われる。雄と雌、それぞれが均整が取れいて初めて高得点は与えられる。

 手塩をかけて育てた鶏を会場のカゴに入れ、餌と水の入った容器を網にかけてやると、出品者の仕事が終了する。後は、審査の結果を待つのみである。

 この出品作業が終わった愛鶏家は、友人たちと鶏談義に花を咲かせ、また、ずらりと陳列された他の出品者たちの鶏たちを見て楽しむ。見学している際、旧友にばったり出会うこともしばしば。肩を叩きあって再会を喜び、互いの近況を話す。

 会場では、そんな和やかな雰囲気が最後まで続く。しかし、実際のところ、出品者の心境は、心穏やかだけでは済まされないものがある。

 自分の鶏が入ったカゴの周囲を見渡せば、実に堂々たる立派な鶏ばかりである。特にどうしても自分が出品した鶏と同じ品種に関心がいく。隣りの芝は良く見えるではないが、やはり他の人の鶏は立派に見えてしょうがない。「果たして、自分の鶏は良い評価をもらえるだろうか?」と、期待と不安が入り交じる複雑な思いが交差する。

 また、ひとカゴひとカゴ、順番に審査する審査委員が、自分の鶏が入っているカゴの前に来たら、もう気が気ではなくなる。審査員は、指示棒を持っていて、カゴから中へと差し込み、鶏の羽をめくったり、足を少しつついてみたりしながら、審査表に点数を書き込んでいく。出品者は、自分の鶏が指示棒でチェックされる様子を見ながら、「どこか良くない部分が見つかったのだろうか」とハラハラするのである。でも、そこはポーカーフェイスが多い愛鶏家である。心情をなかなか顔には出さず、取り立てて審査には興味がないように見せかけ、楽しそうに鶏談義を続ける人が多い。しかし、さすがに緊張感までは隠すことはできない。誰もが自分の鶏が果たしてどのような結果を得たか。気になってしょうがないのだ。

 ちなみに審査の基準は、今回取材に伺った日本家禽会主催の共進会では減点方式が取られている。

 まず持ち点として、雄雌ともに100点づつが与えられたうえで厳正な審査が行われる。審査項目は、調和、体重、状態、冠、頭、嘴、目、翼など合計で16の項目がある。悪い部分があれば、減点され最終的に得点が決まる。ただし、それぞれの項目の配点は品種によって異なっている。つまり、鶏にはその品種が持っているそれぞれの特徴がある。例えば、シャモの場合であれば、闘鶏らしくしっかりと尖った嘴、鋭い眼差し、力強い脚などに重点が置かれる。そういった部分には高い配点が設定されるのだ。

 このように配点が品種によって異なるため、審査員はまさに鶏を見るプロでなくてはならない。品種それぞれの特徴を頭に叩き込み、常にその理想像を描きながら、採点していくのだ。
出品された鶏を審査する審査委員。
定期的に勉強会が開かれ、
審査委員の審査技術の向上が
図られている。

三大長鳴鶏のひとつである唐丸
長鳴鶏の中でももっとも
知名度が高い東天紅
大柄の体躯を持つ名古屋