第1回「幻の南部白笹鶏を追って」
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南部白笹鳥の未来
 
 こうして、「ただ好きだから」と大切に南部白笹鶏を飼い続けた砂川さんのお母さんの周辺は、「幻の南部白笹鶏復活」のニュースにより途端に騒がしくなったが、お亡くなりになるまで鶏への愛情は変わらなかったという。お母さんにとって南部白笹鶏とは、あくまで“めんこい鶏ッコたち”であり続けたのだ。
 現在、砂川さんが飼育する南部白笹鶏は60羽程。少しづつ数を増やし、いつかは鶏と人が自然の中で自由に時を過ごせるような場所を作るのが夢だという。

 お話の最後に、砂川さんにご案内していただい鶏舎の中には、止まり木に留まったり、餌をついばんだりと、思い思いに過ごす南部白笹鶏の姿があった。名の由来にもなった純白の白い羽模様はあまりに繊細かつ優雅で、“地鶏”という田舎っぽいイメージからは遠くかけ離れていた。

 シンプルながらも何とも言えないその美しさに後ろ髪を惹かれながら、鶏舎の外に出ると、空からはさきほどと変わらず雪が降り続いていた。ひらひらと舞い降りる雪を見ながら、この旅では、目も眩むほどの長い時をかけて、風土の中で培われてきた“地鶏”の意味を見つけたことに気が付いた。

 今、目の前を舞い、落ちていく雪のひとひら、ひとひらが南部白笹鶏の美しい羽模様とあまりにも似通っていたからだった。
 
鶏舎内の風景。
現在は60羽程の南部白笹鶏が飼育されている。